想像力の欠如は怖いですよね。

社会学の現場がどういうものかを知るのに、いい経験になるようにと、このようなインタヴューが岩波書店の倫理観に基づいて掲載されています。

岸政彦 「調査する人生」 | web岩波 (iwanami.co.jp)

社会学は、日本の場合は、とある社会構造のなかに研究者がコミットして、実態を調査して論文にするという作業になります。

つまり、どんなに深く、とある社会構造のなかにコミットしていったとしても、社会学者は「観察者である自分」という担保があるので、その社会構造の問題を表面化させるまでのスキルはもっているのですが。

その社会構造の問題の構造が、どのようにして、後の社会にそのまま移築されないように、構造の中にある実際の人たちを救うかまでは、射程としておさめられない学術なんです。

例として、皆さんが読めるようなテクストを挙げただけで、社会学の本はいくつか読んでいます。

日本の場合だと、こういう社会構造の闇が横たわっていますというのを切り出して、論文にして終わりという様式美なんですね。

コミットしつづけながらも、根本的な解決策は手段として持てないんです。社会学者ですから。

日本の社会学者の著作は少し読んだことがあるんですが。

結論は毎回一緒なんです。

だから、どうしたいんだろう?です。

フィールドワークでの苦労自慢の話なんだろうか?それとも、フィールドワークの時に自分の周囲に渦巻く諸問題について、救いたくても救えないこの葛藤を知ってくださいという著作を通して、それぞれの社会学者が仮想している読者によるセラピーの事前承認にでもなるんだろうか?

一体何なんだろうって思うことが少なくないんです。

日本の精神医療も少しですが、似たような構造を内包しているので。

最近は購入もしていない、現代思想なんかで、むかし当事者研究というのを巻頭で特集していたのです。

それを読んでいた時の感想と同じなんですよ。

そういう概念があって、だから何?という感じです。

社会学者の場合は、結局、学究という逃げ場を確保しつつ、観察者という視点をもって、苛烈な社会構造の中に身を置いているだけです。一過性にすぎません。数年かけてこういう社会構造を発見しましたと報告書を論文の形で提示するのですが、似たような構造は日本のあちらこちらに案外潜んでいるはずで、だから?その社会構造にたいして何がしたいのだろう?という感想にしか行きつかないんです。

当事者研究についても、予後がよくなれば、当事者で無くなる可能性が高いけど、どうなんだろうって思うんですね。私は精神医療の病の当事者なんだという自己暗示みたいになっている局面もあるんだろうなと思っています。

新しいお薬で案外治ったりするかもしれないのに、いつまでも当事者でいて研究を続けなければいけないって、ある意味、日本の精神医療の末路を体現しているのかもしれないと思ったりもします。

バルビツール酸系を処方されて、そこから脱却しても、睡眠の状態に体をもっていく脳の本能をつかさどる部分の損傷がある不幸と比べても、回復の余地はあると思ってしまうんですよ。

何故、回復したいって思わないの?って思うんです。

おそらく、一部の社会学者も、一部の当事者研究のみなさんも、その構造に捕捉されてしまうことで成立しているので、その構造を解体してどうにかしようという別の視座がもてないくらいに、巻き込まれている自分を突き放せないんだと思うんですよ。

精神科医というのは基本的に白衣の優位性を確保しているだけの存在なので、患者を支援しようという形式をもっていたとしても、自前で全部成立しているわけでもないんです。

国の補助金ゼロの支援施設がゼロですから。

この手のものは本当に苦手ですね。

自存性がないって感じがしますし、寄生性というのもどうかなーと思います。

太鼓持ち的な立場なんだろうかって思うんですね。

古代ギリシャにも、太鼓持ちって存在しますから。太鼓持ちの存在の歴史って長いんですよ。

サイトに掲載されているインタヴューは読みましたが、やっぱり、だから結論はなに?って気持ちにはなりますね。英文学で叩き上げられていたりするとオリジナリティという概念については、厳しい視点を向けるので、借り物で何かしようとしているものに対しては、斜に構える姿勢になります。だって、中身が薄っぺらいですから。他国の文学でも同様だと思いますよ。随分以前に、ドイツ文学の物語論の翻訳の研究書を読みながら、いいなぁー、このアイディアを援用できれば楽なのだけれど、国が違うと、言葉も文法も変わるから、もちろん、文学の素地が変わるから、簡単に接ぎ木なんてできないしって、とても羨ましい気持ちになったこともあるくらいです。統語が異なるって厳しい現実がありますからね。

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