新聞で驚いたこと。

以前のことですが、当時はまだ新聞の書評欄を読んでいたのです。そこで、はっと驚いたことがありました。

亡くなる数年前はきっとエッセイストとして有名だったドイツ文学の池内先生の書評が掲載されたときに、はっとしたんです。池内先生は新聞の書評をやっておられたのです。

先生、嘘ついたぁーと書評を読みながら、あんなに心底驚いたことはありませんでした。

書評をしている本についてというよりも、これくらい嘘ついても、新聞社の校閲なんて見破れないもんねーという趣旨のものでした。

集英社という会社の歴史は長く、集英社が昭和に出した世界文学全集というのは、きちんとした人文の大学の図書館だとおそらく全巻揃えてあるはずです。実際そこで本を手に取ったこともあります。その全巻数を池内先生は故意に間違えて、書評の文章をお書きになり、新聞の校閲なんてするするーと通ってしまい、私は日曜日の紙面をみて、えーっとなったのです。

先生、そんな数、全集は編纂されていませんよーと驚く校閲も、書評欄の担当者もいないんだと、あの時ほど愕然としたことはありませんでした。

池内先生が書評欄で故意に嘘をついたんですよ。

先生の文体に触れたことのある方なら驚かれると思います。校閲を通ってしまったので、未来永劫、先生の書評の嘘は訂正されることもなく記録として残り続けるのです。

池内先生は、当時なにか、憤懣やるかたないというお気持ちになることがあったのでしょうか?

私には全くわかりませんっ。

あの時ほど、どうしよう、どうしようと思ったことはありません。

確かに、大学の図書館くらいのサイズにならないと集英社の世界文学全集なんておいてありませんしね。なぜか、遠藤周作の翻訳とかも含まれています。

日本の場合は、マンガ文化の台頭があり、大人でも活字が読めないという先進国でもありえないという状況に瀕しているので、池内先生のいたずら心が届いた層も、いまでは限界があるんです。

かなり深刻な問題なのですが、日本の文部科学省がその危機に何か対応しようとした事例は寡聞して知りません。

もっとひどいのが、NHKのラジオです。NHKのアナウンサーも自国の作家や詩人の作品を読みこなす技量がないので、ものすごく貧相な状況になっています。

生まれてはじめて、こんな酷い朗読を聞きました。信じられなかったです。担当のアナウンサーは萩原朔太郎の作品が読みこなせていません。おそらく、随筆も読んだことがないので、こんな大仰な朗読になっています。直ちに、青空文庫で読み直しましたが。酷い朗読です。

NHKがこんな低レベルでいいのでしょうか?

恥ずかしくって、恥ずかしくって、どこに隠れたらいいのかわからないくらいです。

そもそも技量として出来ないのであれば、やめるべきだと思いますよ。恥ずかしい思いをするのはNHKになります。実は日本文学自体は世界の大学で研究対象になっています。また、文学を読む層というのは年齢問わず一定層出てくるので、余計に恥の上塗りになっています。信じられませんっ。

error: Content is protected !!