映画です。実は観たかったんですね。ジュディ・デンチさん主演の『あなたを抱きしめる日まで』の制作陣が映画を手掛けたと読んだので。
制作のスティーヴ・クーガンさんは映画化するにあたって、徹底調査をなさったそうです。

英国王の遺骨を駐車場で発見、発掘を後押しした歴史マニアの直感 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)
有料の手前の情報だけで十分ですよ。
当初、王の遺体はレスターにあった修道院の敷地内のグレイフライアーズ教会に葬られた。ところが、1530年代にヘンリー8世が修道院を閉鎖し、教会を解体した際に、遺骨は墓から持ち出されて近くの川に投げ込まれたのだろうと、長らく考えられていた。
数百年の間、リチャード3世は主にシェイクスピアの悲劇に描かれているような残忍な王だったと考えられてきた。しかし、王を敬愛する歴史マニアたちによって結成された「リチャード3世協会」は、その悪いイメージを払拭し、王の名誉を回復しようとしている。彼らは自らを「リカーディアン」と呼び、王の埋葬場所を見つけるために活動してきた。
ナショナルジオグラフィック
リチャード3世協会に所属をしているフィリッパ・ラングレーさんのプロジェクトチームが発見をなさったそうです。そうです。映画製作を手掛けたクーガンさんが調べたのは、ラングレーさんの調査の実態です。
ラングレーさんをそのまま主人公に据えて映画を撮るとドキュメンタリー映画になるので。
フィクションの要素を入れて映画化をするために、ラングレーさんが行った調査がどのように行われたのかを徹底的に調べたそうです。
仕上がった映画は『ロスト・キング 500年越しの運命』です。
映画のなかのラングレーさんは虚構のラングレーさんです。映画ですから。映画化するにあたって、映画で出来るとあるトリックを使っているんですよ。
映画のなかのフィリッパさんは、リチャード3世の観劇をした後に、なぜかリチャード3世にとりつかれてしまうんです。

もちろん、実際のリチャード3世の遺骨発見を描く映画なので、ホラーではないんですが。
実は、映画のなかのフィリッパさんは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ICDの分類のようです)を患ってらっしゃいます。慢性的な疲労が体から抜けないそうです。咽頭痛や頭痛などの症状がでるそうです。医学的には未分類の疾患になります。
体も辛いなか、別居中なのか離婚しているのか、そんなご主人と分担で子育てもしています。
そして、リチャード3世にとりつかれてしまうんです。
可哀そうに。
リチャード3世ってシェイクスピアの悲劇としてもとても有名な作品なんですよ。描かれているリチャード3世は冷酷無比で、王冠の座を奪うためにはなんだってする恐ろしいひとなんです。怖い人なんです。残酷なんです。
とりつかれた当初に、フィリッパさんはリチャード3世にきちんと断りをいれるんですね。「あなたが幻覚なのはわかってるから」って。止めてほしいって。ダメ押しに「ここは私有地なんだからって」。
そして、どこなんだろうって思いながら映画を観つづけると、舞台になっているのは、スコットランドのエディンバラなんですよ。私有地どころか、スコットランドなんです。イングランドの王様が、スコッツになに喧嘩売ってんねん、イングランドに帰りやって云わない、とてもやさしい人なんです。
さらには、本屋さんに行って、シェイクスピアを観劇した後なので、史学のリチャード3世についての本を読み漁るんですね。

そして、シェイクスピアの描いたリチャード3世のほうが虚像なんじゃないの?という疑問が沢山よぎるみたいです。
目の前にたまに忽然と現れるリチャード3世は、途中から、リチャードさんと呼びたくなるくらいに、鷹揚で、ユーモアのセンスもあり、結構、いいひとなんですよ。

実際に、リチャード3世は歴史上でも王位の権利がないのに、王の座についたひとだという認識が広く一般的で、お墓も見つかってなかったんです。
そして、仕事や生活や子育てを犠牲にして、リチャード3世の名誉回復のために、葬られたはずの場所を夢中で探す、フィリッパさんを心配するんですよ。リチャードさんが。
「個人的な見解かもしれないけど、不健全な執着心みたいになってるかも」って。
映画を観ながら、リチャードさんがとりついてるからかもしれないよ。気づいてる?って思いましたけど。
リチャードさんなんて、途中まで喋りませんからね。突然、喋り出すんですよ。フィリッパさんも「喋れるの?」って驚くほどなんですよ。「いままで尋ねられなかったから」って呑気に返答してしまう王様なんですよ。フィリッパさんに、あんなに残虐なことを本当にしたの?って何度も聞かれると、黙り込んでしまって。普通だったら、急に現れて、急に消えるくせに。
僕、傷つきました。そんなこと云われるなんて。僕、傷ついてます。本当です。って主張するために、わざわざ背を向けて、歩いて去っていくんです。傷ついたことを静かに主張するんですよ。リチャードさんは。

若干面倒くさいひとにとりつかれてしまうんですよ、フィリッパさんは。リチャードさんには多分、悪意はないんですけどね。
多分、別居中なんだと思うんですが、ご主人なんて大変なんですよ。イメージに浮かぶのは、どう考えてもシェイクスピアのリチャード3世になるんですね。でも、フィリッパさんは、フィリッパさんにだけ見えるリチャードさんの為に頑張っているんです。そして、やっぱり、ムカついてしまうわけですよ。ご主人なので。誰だかわからないリチャード3世に、やきもちまで焼かないといけない羽目にもなるんです。
リチャードさんは舞台衣装でいつも現れるんですけどね。
そんなことご主人にはわかるわけもないですし。
そして、レスターに、そうです。元日本代表の岡崎さんが所属していたミラクル・レスターで有名なイングランドのレスターです。リチャード3世が埋葬されている可能性が、レスターにあるということになってしまうのです。実際に可能性が絞られた候補地だったそうですが。レスター大学の関係者に協力してもらうべく、きちんとケーキを焼いてもっていくんですよ、フィリッパさんは。多分、ご主人のほうが料理の手際が良さそうな感じがしますが。要するに出来たケーキが美味しかったらいいんですよ。

この映画の風土が存立できるのは、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国だからだろうなって思います。
大学は大学として専門の研究機関として存在をしているんですが。何かを研鑽するというクラブを作る風土がグレートブリテン及び北アイルランド連合王国には根差しているんです。
結構、きちんと整備されている研究会ってあるんですよ。どの分野にも。
議論は広く開かれているんです。大学だけの占有物ではないんですよ。
そういうお国柄なんです。
「リチャード3世協会」は実際にある協会ですが。研究対象になりうる対象があり、議論ができるのであれば、どんな分野でも「リチャード3世協会」のような議論の場所を作ってしまうのが、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の風土なんです。
史学って考えると、日本でも地域、地域の研究家のみなさんっていらっしゃるんです。地域の歴史を研鑽なさっていらっしゃる方とか。いらっしゃいますよ。在野の研究者って。
大学がお高くとまって、在野の研究者をあしらう感じは、日本でもよく見られる光景になるのかもしれません。よく知りません。
大学がというよりも、大学の事務方の皆さんの方が、在野の研究者を軽く扱ったり、手のひらを返したり、利用したりというのは、普通にあります。学生を軽く扱ったりもします。実際に、え?勉強会じゃなかったの?というのが大学の事務にバレて、大変なことになっていく状況に遭遇したこともあります。

手のひらが返される光景は何度か見ました。
嫌なものですよ。実際にみると。
フィリッパさんを演じるのは、『パディントン』などの作品にも出演なさっているサリー・ホーキンスさんです。
映画を観ていると、最初は神経質なひとなのかな?って思うんですけど、途中から、とてもチャーミングな女性にみえるんです。
実際に、洋服がとてもおしゃれなんですよ。カーキのトレンチがとてもお似合いで。色の組み合わせとか、とてもお似合いで。おしゃれなんですよ。ショートヘアに似合ってらっしゃいます。
色使いとかとてもお似合いで、おしゃれです。
ちなみに、最後のほうで、リチャード3世が馬に乗って供を連れて出てくる場所は、私がたまに言及する薔薇戦争の古戦場になります。最後に戦ったのは、後のエリザベス1世のおじいさまのヘンリー7世です。相手は、リチャード3世になります。長い戦争だったんですよ。30年くらい内乱状態です。
長い内乱があったから、リチャード3世の人物像をシェイクスピアが劇的に描いてしまったのが、当時受けたのかもしれませんし、実際の史学に深い影響まで及ぼしたのかもしれませんよね。
戯曲と史学は違いますしね。ただし、戯曲が出来るまでに様々なリチャード3世の逸話はあったんだと思うんです。実際に、シェイクスピアって有能な劇作家なので。歴史上の人物の像が上手く結びあわないところに、絶妙に落とし込んでいったのかもしれませんし、可能性は否定できません。なので、演劇としては残るんですよ。史学は史学なので、シェイクスピアを巻き込んだ視点を取るのはお門違いですが。学問の質が異なりますしね。
大変なんですよ。シェイクスピアって、自分の墓碑に呪いの警句を刻んだことでも有名なんですが。墓地がある教会で修復工事の時に、現場の皆さんがかなり大変だったみたいです。みなさん、迷信を守って出来る限り、シェイクスピアの意思を尊重したそうです。研究者も調査はしているんですが、地面の下に墓があるので。レーザーで調べたら、頭蓋骨がない可能性があるのかもという争点になっているそうです。実際に、お墓を掘って調べられないんですよ。呪われたら困るんだそうです。
呪いって存在できませんけどね。東京に行くと平家の呪いは架空として存在しますが、西に下ると平家の胴塚や首塚と共存する生活圏が普通の風景ですから。呪いは存在できません。
日本の都道府県単位で実際のひとびとの生活で証明しています。
それでも、市井の歴史を勉強する人の努力によって、リチャード3世の復権が行われたのは事実なんです。
凄いことですよ。
リチャード3世の遺骨からミトコンドリアDNAを抽出して解析にかけて、リチャード3世の母系のDNAと一致したそうです。議論に次ぐ議論、裁判に次ぐ裁判が繰り返されたのちに、2015年にレスターの大聖堂に埋葬されたそうです。現在のイングランドの王室はヨーク家の血筋ではないですし。埋葬されるまでの道のりが大変だったそうです。レスターがクラブチームとしてプレミアを制したのが2016年なんです。レスターは当時忙しかったんですね。