近所に八百屋さんがあったんです。ちいさな店内ではお野菜や果物を扱っていて。地域に溶け込む人気のお店でもあり、いつもお客さんでにぎわっていました。
いつも利用していたんですが。
ある冬に、みかんが箱で売られていて、数百円の値段だったんです。

みかんを箱買いした経験がまったくなかったので。
箱買いしてみようと思い立ったんです。
持てるかな?みかんが入った箱を抱えて、部屋まで帰れるかな?
お客さんが多いので、その陰に隠れるようにしながら、おもむろにみかんの箱を持ち上げて、なんとかなりそうだったので。お金を支払って。
みかんが入った箱をかかえて帰宅したんです。
箱には「みかん」と書かれていて。
わかりやすく帰宅しました。

八百屋さんにみかんの箱を上下逆にしておくと、みかんが痛むのがおそくなるよと教えてもらっていたので。その通りにして。
部屋の片隅に箱買いしたみかんが存在感を放つことになったんです。
そこから数日して。
不幸なことがわたしの身におこったんです。風邪をひいたのです。学校は休みに入っていて、病院に行きたかったんですが。雪が舞うなか病院に行くべきなのか、解熱剤を飲んでしのぐべきか判断がつかずに。
熱はどんどんと上がっていきますし。朦朧としますし、寒気もひどいんです。
スーパーまで這うようにして出かけて、おうどんなどを大人買いして寝込んでいました。
熱をはかるとあっという間に39度を超えていて。
これはインフルエンザなのではないのかな?と思ったんですね。
後にも先にもこれきりの経験なんですが。偶然、アメリカ合衆国の皆さんはインフルエンザだとお薬を飲んで自宅で治すらしいよという都市伝説なのか本当なのかよくわからない噂話を、休みに入る前の学校で教えてもらっていて。
頑張ってみようと思ったんです。
高熱を出しているので、判断がおかしかったんだと思います。

市販の解熱剤を乱用し、ふらふらしながら温かいおうどんを作って食べ、パジャマやシーツを洗いお風呂場の乾燥で乾かし、みかんを食べてビタミンを採り、また寝込み、そんな数日を繰り返したんです。
病院に行けば、2~3日で下がるはずの熱は、5日以上続きました。
熱が出てやることがないので、みかんの薄皮をきちんと取り除いてできるだけ食べやすくして食べるくらいしか楽しみがなく。
熱が下がったころに、なんて馬鹿だったんだろうって。
ちょっと寂しい気持ちになったりも。
冬にみかんと記載が目立つ箱にはいったみかんの山をみかけると、自宅で必要以上の日数をかけて退治した、いつかの冬のインフルエンザを思い出したりもするんです。
思い出すたびに、愚かなことはやめようと思い返すいい機会になっています。
みかんを地道に食べてました。買っておいてよかったなってあの時は思いましたよ。ちょっとだけ野菜を添えた温かいおうどんだけではどうしようもなかったです。