映画館で観ることはできなかったのです。

映画の文化圏に住んでいないので。しょうがありません。いつソフトは発売になるんだろうと、定期的にチェックをして、予約までして購入しました。

私がアニメの映画のソフトを購入するなんて、ダネリヤ監督作品じゃなかったら、正直ありえません。

ただ、私の場合は『不思議惑星キン・ザ・ザ』のソフトも持っているのです。そして、現代版として、しかもアニメーション作品としてロシア映画として、観たんですが。

普遍的だなぁーと思いました。

説明のタイミングも絶妙でしたし。情報量が少ないと何がテーマの映画かも理解がむつかしいかもしれません。

なので、ヒントを出しておきたいと思いますっ。


1.急に放り出される宇宙空間では、地球の価値観は全く通用しません。

高名なチェロ奏者で大学でも教えている伯父さんが持っている価値観は宇宙では粉々になります。青年トリクのしなやかさは価値観の全く通用しない宇宙では若干空振りです。


2.マッチが砂漠で莫大な価値を持つなんて。

これは実写版とテーマは同じなのです。とても価値が低いものが急に価値をもつ、しかもマッチです。火をつけると消えてしまうそれだけのマッチです。そして、その有用性はまったく明らかになりません。私たちは通貨をさまざまなものと交換可能なものとして価値を置いていますが、通貨を追いかけるヒトと、マッチを追いかける宇宙人は相似形をなしていて、完全に風刺の対象になっています。


3.支配者と被支配の関係性ってそれでいいの?

一党独裁の旧ソ連で映画になったものです。そして独裁という政治形態のバリエーションは、実際かなり多彩です。日本だって例外じゃありませんよ。安倍政権のとき、あれは一種の独裁でしたから。岸田さんになってからようやく記者会見が少しまともな状態に戻ってきています。政権与党の形態は一緒でも、独裁と報道の不自由と忖度という長い弊害が続いたのです。同じ政権与党で、岸田さんが要らない梯子をそっと外しただけで、記者会見が通常モードにもどりました。じゃあ、安倍政権のときのメディアの空中分解はどのように考えればいいんだろうって思いながら、観てみてください。

どのような形態であれ、独裁体制って政治形態のひとつとして戦後の日本に出現したんですから。そのときの記憶をもとに、この映画を観ると辛かったなぁーって、あのメディアの死に体って何なのだろう、NHKなんて、いつ東北の震災の時のレベルに戻れるのだろうかと、悩んでしまいますよ。あのとき、NHKはたった一日で海外の報道にのせる番組を制作しましたからね。

大規模な震災の後に政権が代わってから、独裁体制になるまでに、日本で、ずーっと続いた不条理をこの映画に感じ取ることは、不可能では、ありませんよ。


4.価値観が転倒するとすべてが薄っぺらくなってしまう。

どれだけ努力しようが、むなしさを抱えようが、まったくその努力が通用しないんです。虚無感ですよ。社会主義は崩壊しているのですが(独裁国家は地球上にいくつも存在しています)、ロシアも一応民主主義なんですが、虚無感は続いているんだなというのは感じ取れます。アニメーションとしては結構苛烈な作品になっているので観る人を選ぶと思います。実写版をソリッドにしているので、余計な説明はかなり省かれています。どさくさに紛れて作られた実写版と、どさくさなんて全くない現代ロシアで制作されたアニメーションでも、テーマは同じなんです。


日本のアニメ作品ももっていないわたしですが。これは購入してよかったと思いました。

わたしが思っただけなんです。

つまり、万人受けはしません。風刺の度合いは切れ味鋭くなっています。文化の成熟も若い世代のセンスも全く通用しません、そんな世界の果てが描かれています。これをアニメーションで乗り切ってしまうっていうのが、ロシアの成熟なんだと思いますね。日本のアニメーションだと(あまり知見はありませんが)、このレベルまでは到達できないと思います。

機会があったら、観てみてください。

観るときの姿勢は、不条理文学を読み込む感じで、または腐敗政治について思いを致す感じで、どうぞ。

子供たちが観てもいいかもしれません。中学生以上が望ましいかもしれませんね。いろんな意見が出そうです。中高生が抱えている心でこの映画を消化した時に何が見えてくるのかは興味があります。あんまり事前に予習しない方がいいですよ。映画って勉強の対象ではなく、感性の対象になるものなんです。本来は。

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