音楽が生理的に受け付けないという数日があったんです。不思議な経験でした。
シーンとしている夜もなんだかなと思って、ベックの音楽をかけたんです。手持ちの音楽はすべてCDなんです。アナログは保管場所の確保で既に挫折しています。
悲しくなる要素がまったくないはずなのに、悲しいんですね。心当たりはあったので、素直に聴くのをやめました。私が所有しているCDの半分ぐらいがしばらく聴けない可能性もあり、かなり困り果てました。
それで、久しぶりにBBCのラジオをかけたんですよ。Radio 5をかけるとなんだか皆さんの機嫌が斜めなんです。原因はよくわからず、天気が悪いせいだろうか?と思ったり(日本のラジオと一緒で天気予報が流れます)、それで、Radio 3に変えてみたんです。
日本の夜は、イングランドではちょうどお昼ごろで、クラシック音楽の小品がかかっていました。ちょうど、ラヴェルのピアノ曲が終わるところで、ドビュッシーのピアノ曲もかかったり、そして、いつものごとく、サティのピアノ曲は無視をされ、ぼんやりと聴いていると、「これから、ジョン・ウィリアムズの映画音楽をバーンスタインの指揮でお送りします」とアナウンスが流れ、え?バーンスタインが映画音楽でタクトをふるったことがあったんだろうか?となりました。

スピルバーグ監督がリメイクした『ウェストサイドストーリー』のオリジナル作品の音楽を指揮なさったそうなんです。
リメイク作品は未見ですが、オリジナル作品はこれは観るべき作品なんだろうと考えて、観ています。全く知りませんでした。バーンスタインさんって、なんて心の広いひとなんだろうと思いながら聴いていたのですが。
よくよく考えると、こっちを選曲してもよかったんじゃないだろうかというウィリアムズさんの曲があるんですよ。
ラトルさんは、いまはロンドン交響楽団にいらっしゃると思うんですが。その前はベルリンフィルの音楽監督を務めておられたんです。
いつかの夏に、敷居が高いベルリンフィルをもっと身近に感じてもらいたいと、野外で、映画音楽の演奏会があったはずなんです。
お聴きになってもわかるように、映画から流れてくる、あのスター・ウォーズのテーマと同じ楽曲とは思えない深みがありますよね。
映画音楽を、卓越した指揮者が譜面を研鑽し、ベルリンフィルの底力で演奏すると、こんな素晴らしいことになるんだという事実を伝えた方が、イングランドのみなさんのためになるんじゃないのかなと思ったんです。
ただ、調べていくとGrammophon(クラシック音楽専門のレーベルです)のYouTubeで、ウィリアムズさん本人が指揮をしているベルリンフィルを取り上げていて(もちろんスター・ウォーズの別の映画音楽を演奏しています)、そちらは、映画から流れてくるスター・ウォーズになっていて、むつかしいなぁーと思ったりしました。
それは、むつかしいよなぁーです。もう、ウィリアムズさん次第なので。
よくよく考えると、あ、音楽でもクラシックの分野だったら、音楽が聴けるじゃないかと思い、しばらく、ずーっとラヴェルのピアノ曲をかけていました。
子供のときに、NHKではクラシック音楽を大事にしていて、FMでも交響楽を流していたりしたんです。なぜか、ベートーヴェンの7番が気に入ってしまい、勉強するときのBGMにしていました。理由については子供のときの自分に問いかけたいくらいですが、判然とはしません。田園と勉強がなぜか私のなかではちょうどよかったみたいなんですよ。へんな子供ですよね。
ラヴェルも好きで、NHKで聴くラヴェルは、そのときの偶然ですが、どちらかというとドビュッシー的な解釈だったんですね。当時はそれが正しいんだと思っていたんです。
実は、ラヴェルにはお弟子さんがいたようで、Henritte Faureさんという方です。直接指導を受けたそうで、ラヴェルのピアノ曲を全曲演奏録音なさろうとしたこともおありだったそうです。
こちらを聴くと、あ、ラヴェルはこういう風に演奏されるピアノ曲なんだなと思うんですね。
だだし、何が正しいのかというのは、クラシック音楽ではむつかしい課題になるので、別のアプローチがあっても優れていればいいんだと思うんです。
交響楽なんていったら、大変ですよ。本当に。
ラヴェルに関しては、一番有名なのは、バレエのための『ボレロ』になると思います。最初にチェリビダッケさんの指揮を聴き、その後、もう一枚持っていた方がいいのかどうかかなり迷った末に、デュトワさんを購入しておしまいにしています。チェリビダッケさんの『ボレロ』はいいんですよ。とても。
個人的にはそっちで耳が慣れています。
いろんなジャンルの音楽に接していると、いいことあるなと思った1週間でした。
細野さんが追悼番組をおやりになると知って、ずっと細野さんの心配をしつくして、番組に備えました。細野さんの追悼はきちんと聴けるようになろうと思い、毎日、曲をかけては挫折して、あ、今日は聴けたと思っても、翌日は無理だったり、結構大変でした。体勢を整えて、膝を正して聴いていました。最近は少し聴けるようになっています。SNSで、いまこの曲を聴いていますという皆さんのつぶやきを、たまに読んで、いいなぁー、いいなぁーと、指をくわえて読んでいたことは内緒なんですよ。細野さんの番組だけで十分なんです。音楽の話ですが。実は演奏会でかなりこころのなかが混乱したこともあります。ピアノ曲では、私がバッハのコルドベルク変奏曲が好きなのを、学校の先生が知っていて(学校の先生は(複数形です)家族よりも私に詳しいんですよ、正直言って)、高橋悠治さんがここに演奏にくるらしいから聴きに行くといいよ、と教えてもらい、CDを買って聴きこんでから演奏会に出向くと、聴きこんだCDの音源を、つまりCD録音の演奏をご自身でパラフレーズしていく演奏会で、ちょっと混乱したんですね。演奏会に行って混乱したのは、あの時が最初で最後になっています。目の前で高橋さんのコルドベルク変奏曲が壊れていくような感覚に陥ったようで、でも、弾いてらっしゃるのは、目の前の高橋さんご自身なので、余計に混乱をした覚えがあります。凄いですよね。高橋さんは。かなり前の席が取れてしまい、手元が見えるので、どうしようと思いました。もちろん、演奏会なので取り乱したのはこころのなかだけです。関西人なので(?)、平静をきちんと装えるんですよ。きちんと拝聴していますという感じで、こころのなかだけでわたわたしてました。
